人力飛行機のような低出力で軽量の飛行機はフライト時に風の影響を大きく受ける.人力飛行機プロジェクトは6月〜7月にかけて何度も飛騨に来るらしいが,悪天候や強風でほとんど飛ばせずに帰ることもことも多々あるらしい.しかし今日はこれ以上になく天気がいい.しかも風もほとんどない.絶好のテストフライト日和である. |
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機体の組立てが完了すると,いよいよフライトが始まる. 機体を駐機場から滑走路へ移動させる. 機体各部についたメンバーが,指示に合わせて巧みに大きな機体を移動させていく. 5:49 ついに滑走路に飛行機が現れた.全幅32m.YS-11と同じ幅である. 滑走路の幅をめいっぱい使っている.でかいなあ. パイロットが搭乗し,制御系の電源が入れられる. これにてフライト準備はすべて完了. しかしコクピットは狭い.そして暑い.パイロットは大変だ. まずはウォーミングアップ兼ねて発進練習. 人力飛行機の離陸時には,メンバーが機体を引いて初速をつける. 発進担当が号令をかける. それに合わせてメンバーが呼応する. 「行くぞ! 練習1本目! 3,2,1…Go!!」 プロペラが唸り,翼持ちが離れ,メンバーが一斉に走り出す. 大きな機体が動き出す. これは発進練習なので,機首上げしない. ここで駆動系にトラブル発生の模様. 駆動系担当が駆けつける. どうやらカウル後部が外れてプロペラと干渉したようだ. 飛ばしてみないと判らないことはいろいろとある. 急遽,調整をする. 駆動系を調整している間に,リーダー達は予定を確認. 天候は良好.ほぼ無風.またとないチャンスである. 30本は飛ばしたい… 結局,今回はコクピット後部のカウルを外して飛ばすことになった. 問題は起こらないに越したことはないが,完璧などありえない.問題を見つけるためにテストフライトをするのである.それにより設計段階では判らなかった問題を見つけ,改善してさらに上を目指すのである. 調整している間に風向きが変わった.それに合わせて離陸方向を変える. 飛行機は向かい風で飛ばすのが基本である.それにより,大気との相対速度が上がり,大きな揚力が得られる.結果,離陸時の対地速度を遅くできるのである. 気合入れなおして本番.2本ほど走るが浮かない. 前翼(ピッチ操縦翼)の角度を調整してさらに走る. 6:39,滑走するタイヤの騒々しい音が消えた. 聞こえるのはプロペラの風切音とメンバーの足音だけ. 浮いた! 何度も見ていても,感動の一瞬である. オリジナルサイズ(0.7MB) 太陽が高くなり,日が照りつける中,何度も走る.そして飛ぶ. 炎天下に聞こえるのはメンバーの足音と掛け声,そして風切音だけだ. ひとときの休息. 休む時も,翼持ちは手を離せない.風が吹けば機体が煽られる危険があるからだ. 再び飛ぶ. 高度は1m前後ってところか. これでもパイロットは相当高く感じるらしい. ところで,この機体は2重反転プロペラを採用している. ピッチが逆のプロペラがそれぞれ右回りと左回りで回転することにより,プロペラ後流の渦の発生を抑えて推進効率が上がるそうである. さらにプロペラの回転方向と逆に機体が傾こうとする力(カウンタートルク)を打ち消す効果もあるらしい. さらに走る. この機体の設計飛行速度は7m/s(25km/h). 100mを14秒ちょっとのペースである. 実際には向かい風で飛ばすので対地速度はもう少し遅いはずだが,ほぼ全力疾走となる. 後方もしくは上方の機体を見ながら全力で走るから,大変. オリジナルサイズ(0.7MB) この日は30本弱を飛ばしてテストフライトは終了.最後のフライトは8:41だったかな.お疲れ様でした. ところで,この後10時半頃からYAMAHAチームがテストフライトをしていた.鳥人間コンテストでもトップクラスの記録を出すチームである. 朝方は無風で絶好のテストフライト日和だったんだが,この頃には3m/s弱の風が出てきて,フライトにはかなり気を使う条件.ところがこの機体は操縦性が非常に高く,そんな風をものともせずに,滑走路の端から端まで約1000mをグランドクルーのサポートなしで一気に飛ぶ.高度も高く,5mくらいの高さはあったんじゃないだろうか. 我が大学のチームが横風に流されそうになって緊急着陸を幾度もしているのを見ると,この操縦安定性の高さは凄い. しかし,ホントここのプロジェクトは体育会系である.これだけ大きな機体を扱うためにはぬるい考えではできないということか.実際,運動部出身メンバーは多い.いや,それ以外が消えていくと言ったほうがいいか. なかなか気合の入ったものが見れた.我が人力ボートとは大違いだな. |
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